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白魔女の館

私と人形1

 父は何か作るのが好きな人で、いつも何かマイブームがあり、何かに熱中しているひとだった。
 そして父がナイフつくりにハマっている時、H本さんという人がうちに来るようになった。H本さんの本業は人形師で、私は『H本のおじちゃん、人形おしえて』と頼んだりしたのだが、『私は弟子はとりません』とあっさり断られてしまっていた。まあ小学生や中学生が頼んだところで、誰も本気にはしないとおもうが。

 しかしひょんなところからこのH本さんと姻戚関係になった事で、立場が逆転し、1991年頃、とうとう人形を手ほどきしてもらえる事になった。
週末にお宅へ通い、一体の人形が完成した。このどこか遠くを見ている少年の人形は当時の自分の気持ちを良く表していると思う。

 当時就職したばかりで、会社の毒気に当てられたりしていたが、人形を作る事で何かピュアな物を保ち続けられたような気がしている。

 その後、結婚、出産、離婚という、人生の荒波とでもいう時期があったのだけれど、再婚して二人目を出産する前、産休に入って上の子に人形をつくってやろうとおもいたち、夫のふるいシャツを紅茶で染めて赤ん坊の人形を作った事は、何か大きな節目だったように思う。

 母がその人形を見て、『貴女、また人形つくってるんだ、よかったね え。』と涙を流さんばかりに喜んでくれたのが印象深い。

 人形は誰にとっても必要な物ではないけれど、私にとっては心のタメに必要なのかもしれない。


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